2013/10/26

にわかサッカーファンの私が Whitecaps FC を応援する理由


明日はバンクーバーのサッカーチーム Whitecaps FC (ホワイトキャップス)の今シーズン最後の試合です。
ちょっとだけ迷っていましたが、スタジアムに行って応援することにしました。

そもそもシーズンも終盤近くなった9月頃まで、私はホワイトキャップスにさほど興味がなかったのですが、最近では夫との会話の25%くらいがホワイトキャップスの話題で占められています。一度スタジアムに足を運んで以来およそ2ヶ月間という短い期間で、かなりホワイトキャップスのファンになりました。

それまでは、たまにテレビやオンラインのストリーミングでサッカーを観ていたとはいえ「日本代表の試合は応援するけど、特定のクラブチームのファンではないし、Jリーグもよく知らない」という感じでした。国際試合以外はあまり興味がなく、日本代表のメンバーが多く所属しているブンデスリーガがちょっと気になるかなという程度、それもリーグとかチームに興味があるのではなくて個人のプレイヤーに関する興味です。

夫は10年以上自分でもサッカーをプレイしていた経験があり、サッカーを観るのも大好きで、YouTubeで有名な選手のスーパープレイ動画とか、有名なチームやJリーグの試合のハイライト動画とかをよく見ているようです。そんな夫に比べたら、私は本当のサッカー好きではなくて、いわゆるにわかサッカーファンです。

特にサッカーに詳しいわけでもない、にわかサッカーファンの私が、なぜホワイトキャップスのファンになったのか。思い当たる理由を書いてみたいと思います。

初めてスタジアムで応援したチームなので思い入れが強い

なぜホワイトキャップスが好きになったのか考えてみて最初に思いついた理由は、生まれて初めてスタジアムで応援したチームなので、ホワイトキャップスに対する思い入れが強いということです。

日本に住んでいたころ、プロ野球の試合は何度か行ったことがありましたが、サッカーの試合を観戦したことはありませんでした。
バンクーバーに越してきてすぐに、せっかく地元にチームがあるんだし応援に行ってみたいかなーとは思ったものの、ホワイトキャップスはそんなに強くないし、カナダで絶大な人気を誇るアイスホッケーと比べてサッカーはそこまで人気がない、という話をよく耳にしていたので、なんとなく実際に足を運ぶところまでは気持ちが盛り上がりませんでした。
実際に観戦に行こうと決めたのは、今年になって夫が地元の社会人サッカーチームに所属したり、私も夫と一緒に家でサッカーの動画をよく見るようになったりしたことで、少しずつサッカーに対する興味が強まった結果であって、ホワイトキャップスがどうしても観たかったわけではありませんでした。

初めて試合を観に行った時、まず心惹かれたのはスタジアムの大きさと美しさでした。特に、開閉式の天井や、その真ん中からつるされた大きな4面のスクリーンに、さすがオリンピックのために大金を投じて建設したスタジアムだけあると感心しました。
一歩足を踏み入れた瞬間「わぁ」と声が出たほどです。本当に。




ほぼ満席のスタジアムの響き渡る声援の中で観る試合は、テレビで観るのとは全く違いました。まず選手の足がとにかく速いです。テレビではそんなに速く見えないのですが、実際に見るとサッカー選手ってこんなに速く動いていたのかとびっくりしました。
初めて観戦した試合は、結果こそ引き分けだったものの、ホワイトキャップスの選手がゴールを決めた瞬間の客席の熱狂をその場で感じ、心がジーンと痺れてしまいました。

きっと、もっと強いリーグを観戦したことがあれば、ここまで感動しなかったと思います。

余談ですが...ホワイトキャップスのサッカーは、パスをつなげてゴールを狙う組織のサッカーではなく、ストライカーがガンガンにドリブルして前にあがってシュートを打ってゴール、という感じのサッカーです。選手の技術や組織力よりも個人個人の力に頼っているような印象を受けました。選手同士の接触(タックル?)も迫力があります。
よく、海外のチームに移籍した選手が「海外のリーグはフィジカルが強い」みたいなことを言っていますが、正直に言うと私は「フィジカルが強いサッカー」が具体的にどういうことを指しているのかイマイチ分かっていませんでした。しかし、ホワイトキャップスの試合を観て一目で「ああ、フィジカルってこういうことか」と思いました。

日本人選手が所属しているので親近感がある

現在MLSでプレイしている日本人選手は3名しかいませんが、なんとそのうちの2人がホワイトキャップスに所属しています。
その3人のうち、Jリーグ出身なのはホワイトキャップスの2人だけです。

1人は2012年に移籍してきたデイビッドソン純マーカス選手。

ファンの間では Jun Marques Davidsonの頭文字をとってJMDと呼ばれています。
守備型のMFで、Jリーグでは大宮アルディージャ、コンサドーレ札幌、アルビレックス新潟などに所属していました。2010年には、現在のホワイトキャップスの監督であるレニー監督の指揮のもとで、アメリカ2部リーグのノースカロライナ レイルホークスでプレイしていた経験があります。

もう1人は2013年に移籍した、同じくMFの小林大悟選手。
Jリーグをあまり知らない私はぴんときていませんでしたが、移籍発表直後には夫が「あの小林大悟がバンクーバーに来るなんて!」とエキサイトしていました。Jリーグではヴェルディ、大宮アルディージャ、清水エスパルスに在籍、ノルウェイやギリシャのリーグも経験しています。
ホワイトキャップスのユニフォームは"DAIGO"とファーストネーム表記ですが、ニュースなどでたまにKoba(Kobayashiを略してるらしい)と書かれていることもあります。

ところで両選手の評判はというと、実は結構微妙なところです。
JMD選手はもともと守備中心の選手なので、ガンガン前に出て得点を決める選手と比べたら目立たない存在です。今年の7月、試合開始後8分で相手チームの選手に頭突きをくらわせてレッドカードで退場になってしまい、それ以降、ファンの間で「JMDは必要なのか?」という議論が起こっているようです。何かとチームの不調をJMD選手のせいにするファンが多いというのがネタになって「(アイスホッケーのチームの)カナックスが2点目を取られたのはJMDのせいだ」という冗談を言う人もいたりします。「アウェイの試合ではJMD選手の守備にフォーカスしたプレイスタイルが必要だ」という意見もあって賛否両論です。

大悟選手に関しては、地元紙やファンの掲示板などでは、年俸が高いわりに期待通りの活躍ができていないという評判です。シーズンの終盤、4-3-3から4-4-2へフォーメーションが変わったところ、トップ下の大悟選手からフォワードのカクタ・マネー選手へのアシストが続いて、最近は好意的な記事もたくさん書かれています。これまで活躍できなかったのは監督の采配不足ではないかという意見も多いようです。

日本で社会人経験を積んだ後でバンクーバーに来て現地の企業で働いている私としては、同年代(大悟選手は同い年で、JMD選手は1つ年下ですね)で、Jリーグで経験を積んだ後、自分と同じくらいの時期にバンクーバーに渡って地元のチームで頑張っている2人に勝手な親近感を感じています。

正直な話、2人が来シーズンもチームに残るかどうかが今一番の私の心配事だと言えるほど気になっています。そもそも毎年どれくらい選手の入れ替えがあるのかわかりませんが、評判が微妙なだけに2人がチームからいなくなってしまう確率は結構高いかも、とかなり気をもんでいます。
明日の試合が見納めになってしまわないよう願っています。


ホワイトキャップスはカナダのサッカーの将来を変える?

ちょっとスケールの大きな話になりますが、ホワイトキャップスは将来のカナダのサッカーを変えることができるチームだと思っています。これはホワイトキャップスだけでなく、MLSに所属するトロントFCとモントリオールインパクツにも共通していると思います。


ホワイトキャップスの所属している MLSは、1993年設立と歴史も浅く、また、サッカー大国ではないアメリカとカナダのリーグであり、サッカーが盛んなヨーロッパに比べると当然レベルは違います。本当にサッカーそのものが好きだったら、MLSを観ても面白くないと思う人も多いかもしれません。

LAギャラクシーにはベッカム選手が所属していましたが、それまでは、いわゆる「世界のスター」級の選手はMLSにはいませんでした。それはMLSがサラリーキャップ制を導入しているからです。サラリーキャップ制とは、チームに所属する全選手の年俸を毎年一定の上限金額を設けて規制する制度です。選手の年俸として使える金額が決まっているので、高いお金でスター選手を連れてくるのが困難なのです。各チーム2名までは特別選手枠を使って高い年俸を払えることにはなっていますが、それでも一部の経済的に豊かなチームにスター選手が集中するということにはなりませんので、結果としてリーグのレベルが均衡化されることになります。リーグのレベルが均衡化されるということは、即ち勝ち続けるチームも、負け続けるチームもないということで、自分たちの地元チームがリーグ覇者になる可能性も大きく、より多くのファンを獲得しやすいということです。(やっぱり、ひいきのチームが勝つのは嬉しいですし、勝っているチームを応援したいですから。)より多くのファンを獲得すればするほど、リーグとしても成長できますし、サッカーというスポーツの人気も上がりますよね。

北米ではサッカーはそこまで人気のあるスポーツではありませんが、実は人気が成長中で、MLSもリーグとして成長しているようです。2012年の調査では、北米のプロスポーツリーグ動員数で、アメリカンフットボールのNFL、野球のMLBに次いでMLSが3位に輝いています。バスケットボールのNBAとアイスホッケーのNHLはサッカーに抜かれてしまいました。(参照:NBA and NHL Get the Boot: MLS Is the 3rd Most Attended Sports League in America )

アメリカでワールドカップが開催された時に子供だった世代が大人になっている頃ですので、当時ワールドカップを見てサッカーを始めた子供たちが、今では選手やサポーターになっているというケースが多いのではないかと思います。

日本も今でこそたくさんの選手がヨーロッパのリーグでプレイしていたり、アジアカップ優勝、ワールドカップ連続出場などを達成していますが、これもかつてJリーグに憧れてサッカーを始めた選手たちが育った結果であり、Jリーグが日本サッカーの振興に多大な影響を与えたからだと言うことができると思います。また、MLSもJリーグのように北米のサッカー振興に大きな影響を与えるだろうと思います。


ところでMLSはアメリカとカナダという移民が多い2カ国のチームから形成されるリーグのため、外国人枠に関して面白いシステムが導入されています。
外国人選手は1チームにつき9名からスタートですが、他チームとトレードが可能になっています。また、アメリカのチームはアメリカ国籍/永住権所有者はドメスティック選手とみなされますが、カナダのチームではカナダ国籍/永住権所有者のみならずアメリカ国籍/永住権所有者もドメスティック扱いになります。ただしカナダのチームには最低でも3名はカナダ出身の選手が在籍していなくてはいけないという決まりになっています。
ホワイトキャップスも今のところカナダ出身の選手が3名ギリギリしかいません。ちなみにJMD選手はアメリカ国籍を所有しているので、ホワイトキャップスではドメスティックの扱いになっています。
アメリカの選手がカナダでドメスティック扱いになるのは、MLBがアメリカで始まったリーグで、カナダのチームがリーグに加入したのはここ数年のことなので、まだカナダ出身の選手があまりリーグにいないためだと思われます。

今はまだホワイトキャップスにはカナダ出身の選手は少ないですが、これから10年、20年先に、ホワイトキャップスのユース出身の選手がチームのトップ選手として試合で活躍したり、カナダ代表チームに選出されたりするのを見ることができるだろうと思います。ホワイトキャップスは、サッカー後進国と言われるアメリカやカナダのサッカーの将来に大きな影響を与えることができるチームになるはずです。


ということで、なんだか力が入って長くなってしまいましたが、以上が私がホワイトキャップスを応援する理由です。
明日はスタジアムで思い切り楽しんでこようと思います。

それでは。

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